2014
03.30

開発途上国の貧困と健康

Category: 未分類
3月27日に佐久医療センターで佐久病院国際保健委員会の第一回の勉強会がありました。

その日はたまたま佐久病院での外来応援の出張の日で、帰りにはじめて佐久医療センターに寄らせていただきました。
シャトルバスで一緒になった渡辺仁院長やリハ科の藤井先生に病棟やリハ室、医局などを案内していただきました。

佐久医療センター


まず驚いたのは空港か星野リゾートかというようなエントランスでした。
そして広々としていながらも機能的な病棟、そして100床以上をカバーする天井走行式リフトも圧巻でした。

勉強会では真新しい会議室に、外国人を支援する活動をしている市民、春季実習中の医学生、研修医、看護師などの職員が30数名集まりました。


講演は「 開発途上国の貧困と健康」というタイトルで、演者は港町診療所(SHARE=国際保健協力市民の会)副代表の沢田貴志先生でした。
佐久病院はJICAなどで海外へ出た経験のある職員も多く、海外からの研修や視察も多い病院であり、病院の理念にも国際保健協力がうたわれており最近になって国際保健委員会が組織されています。
なんと、どの職種の職員でも佐久病院に籍をおいて身分を保障されたまま海外活動へ参加でることができる仕組みも整備されるそうです。

演者の沢田先生とは数年前、松本で開催されたタイ国の移動領事館の際の健康相談に佐久病院の看護師や研修医とともにご一緒した事があります。佐久から松本へ向かう車中で日本国内にいる外国人の現状などについて教えていただきました。

講演ではまず、沢田先生がいらした1990年代はじめのフィリピンのスラムの写真をもとに回虫や結核、子どもの労働や、貧困で医療にアクセスできない状況などが説明されました。

タイやマレーシアなどではその後、健康状態を示す様々な指標が改善されているのに対して、フィリピンではなかなか改善されていきませんでした。
医師数が多いのですが社会保障は脆弱でであり、都市と農村部の格差は大きく公的医療を担う人材不足が深刻なためです。
これは経済格差が大きいのに民間に任せた医療政策のために人材が海外へ流出し、また都市部への集中したことが大きな要因だそうです。
そもそも富裕層しか医師になれず、英語がつかえるフィリピンの医師の半分は米国など外国に出稼ぎにでかけて家族に仕送りしています。残りの半分が都市部のアメリカ資本などもはいったプライベートホスピタルで勤務しており、貧困層の手のとどかないところにいます。
残りの医師が、貧困層を相手にした公的病院や地方の医療を担っていますが、とても追い付きません。

そんな中で佐久総合病院も応援しているフィリピン大学医学部レイテ校では地域の人たちの推薦をうけて入学し、助産師、看護師、保健師と実践しながらステップアップして入学者の1割が最終的に10年以上かけて医師になっていくような素晴らしい医学教育をおこなっています・・。

国際保健

一方のタイは、国営の医療の比重が高く、保険制度も整備され、保健ボランティアが96万人もいて、公衆衛生は充実しています。
講演の会場には3人もタイのマヒドン大学に勉強に行っていた医師がいました。
従来から公立病院での医療はほぼ無料でしたが、低コストの医療に限られており、医療の進歩の中、都市の民間医療との格差が生まれ農村の住民に不満が蓄積されていました。
そんななかで2002年には30バーツ(約100円)、2006年には国民医療保障制度で医療費が無料化されだれでも医療がうけられる政策なども行われています。
HIV/AIDSの政策でも注目されており、HIV/AIDSの患者会が病院の運営に参加するなどピアの活動も盛んです。

しかし、財源確保の問題や、患者数増加による病院の疲弊、民間医療産業の急成長による人材流出などが問題になっているそうです。

それぞれの国の医療の現状を比べてみるのはいろいろなことが分かって興味深いですね。

TPPなどで騒がれている日本の現状も重なります。
善かれ悪しかれ日本語に守られ、日本の医師にとってアメリカなどの医師資格は高い壁ですが、国民皆保険制度も特区制度や混合医療の解禁の動きの中で風前の灯です・・。
我々の創り守り育てるべき医療はそれぞれの地域で自分たちのものとしてつくり育てる医療なのか、グローバル化の中で民間資本の収益に資するサービス業としての医療なのか・・・。


その後、近くの小料理屋に移動して開かれた宴会では外国人支援を行っている市民の方、佐久大学の教員、国際保健協力に関心のある職員、医学生などなど多数集まりました。(電車で帰るために中座しなければなりませんでしたが・・)

農村部の病院で普通に診療していてもオーストラリアなどからの旅行者の他、フィリピンやタイ、中国、日系ブラジル人などの患者さんがきます。日本人と結婚した海外の方のDVなど問題にも直面します。
不法滞在している外国人に医療が必要となった時に、どのように支援し、病院が医療費をどのようにカバーできるかなどについて興味深いお話をうかがうことができました。
スポンサーサイト
Comment:0  Trackback:0
2014
03.23

るえか式心理教育実戦セミナー

Category: 未分類
ディケアのスタッフ4人とともにひだクリニックの「第6回るえか式心理教育実戦セミナー」に参加してきました。

「るえか」とは、ひだクリニックのトレードマーク(前の公園にもカエルの像がありました。そっちが先?)の「かえる」を逆から読んだ言葉で「帰る」の反対の「出て行く」という意味。そしてこじつけでしょうが「Recovery Unit Educational Community Approach」の頭文字でもあるそうです。

 ちなみに「ひだクリニック」から派生した組織に株式会社MARSというのがあってこっちは火星と「Medical and Recovery Service」の頭文字をとった言葉だそうです。千葉県流山市の周辺にはカフェオリゾンテや多機能事業所マーレ、お好み焼き麦太郎など宇宙つながりの名前をもついろんな関連団体や事業所がどんどん増殖しています。

 ひだクリニックの取り組みは「都市部版べてるの家」、「イタリアでのとりくみっぽい」という先進事例で全国的に注目を集めています。安曇野周辺で心理教育や就労支援、当事者や家族の集まりなどいろいろやっている自分としては是非一度お訪ねしてみたかったところでした。

 昨年の秋に松本で開催されたディケア学会の折に肥田ドクターと木村ナースが安曇総合病院で講演をしてくれたのをきっかけに、ディケアスタッフ数名が見学に行きました。
そこでハマったスタッフに今回のセミナーへの参加を誘われて今回自分も初めて行くことができました。

IMG_2901.jpg


ひだクリニックのあるのは、つくばエクスプレスと武蔵野線の交わる南流山駅のすぐ近くです。
秋葉原駅からつくばエクスプレスの区間快速でわずか23分。
クリニックやディケアの建物とは別に駅近くの別のビルに借りたスペースが研修ホールとなっていて、13都道府県から50人以上の参加者がありました。研修ホールでは毎週家族会などのイベントが開催されているそうです。

るえか式心理教育の内容は一貫して当事者や家族をエンパワーメントするもので、希望や健康な部分に注目した心理教育であり、わかり易い言葉でふんだんな例えで色んな角度から病気や薬について繰り返し説明がなされていました。疾患や薬について、くりかえし伝えることで、だんだん当事者や家族のあいだの共通言語となってくるので話が早いようです。

栄養士の伊藤さんの心理教育もまったく同様なスタンスでした。看護師が中心となり血液検査なども計画的になされ、栄養指導が入り、システマティックに生活習慣病もフォローされていることにも感心しました。
またピア活動(当事者の仲間通しのたすけあい)も大事なポイントで当事者研究、SST、WRAPなどのセルフヘルプを中心としたプログラムに力をいれていました。

IMG_2859.jpg
(SSTのグッズ)


見学もさせていただいたクリニックの待合室はカフェのようで、診察室も落ち着いた調度品でした。待合室のモニタに心理教育のスライドを繰り返し流すというのはうちでもマネできそうです。

IMG_2860.jpg


ディケアはひだクリニックのビルの地下と3階にありました。
適度な負荷をかけたリハビリが重要ということで、様々なプログラムを通じて、様々な体験、練習ができるようになっています。地下は学生食堂といったような雰囲気で、その奥の小部屋にはLaLaという模擬会社、となりに栄養相談室がありました。3階は大きめの高級マンションの一室といったおもむきで和室とキッチン、LDKがあり家具などは少なくこざっぱりとした部屋でした。家と違うのは、大きめのちゃぶ台がいくつかあり、ホワイトボートがあることでしょうか。レストランのメニュー形式でディケアのプログラムが紹介されているのが洒落ています。

IMG_2888.jpg


ここでは当事者たちが中心となってSSTをベースとしたプログラムを多数企画、運営しており、その数90個以上だそうです(!)。運動系プログラム、就労支援系プログラム、栄養系プログラム、イベント系プログラムなど各自にあったプログラムを選べます。回復し力をつけてきたエリートの当事者(ゴディバのチョコレートと例えられていました。)が企画も予算も申請して実行するという形です。
フットサルの試合にでて勝つことを目指したり、音楽フェスにいったり、キャバクラに行ったりなんていうのもあったそうです。恋愛もトラブルも大歓迎ですが、苦労やトラブルがおこっても、みんなで解決を考える。SSTや当事者研究が定着しています。このあたりは「べてる」の都会版という感じ。それでもディケアに入って3ヶ月までの定着はスタッフの責任とのことで、綿密にフォローするそうですが・・。
まずは、desireを満たすための居場所としてのディケア、そしてneedsをみたすお祭り的、レクリエーション的ディケアとなり、demandがみえ、ためになるプログラムをおこなえるところまできてセルフヘルプが可能になりアクティビティが上がります。「自分の目標にあった薬」と「適度な負荷」でやりたいこと、将来の夢にちかづくことができる。「できるが増えるとしたいが増える。」ということです。

ディケアの様子はなんだか学生時代のアルバイトやサークル活動を彷彿させました。
これらは社会性を獲得する機会だったのですが、そういった経験をする機会がなかった人、あったけどできなくなってしまった人などにそういった機会を提供しているのでしょう。

回復期にディケアに通えるようになり、ある程度良くなると親も「いつまでもプラプラして」と言いたくなるのですが、焦らないでくださいとのこと。「遊べない人は働けない」というポリシーだそうです。20日連続カラオケという企画をたてたときは脱落者も多く、当事者も好きなことでも疲れる、仕事に行くって大変だというようなことを学べたそうです。

IMG_2885.jpg


普通のプログラムでは物足りなくなってきたら、ひだクリニックのディナイトケアのプログラムとしての職業訓練の模擬会社あります。報酬はありませんが、上司に扮したスタッフが一般社会よりもビシビシ厳しくやって、理不尽なことも体験するそうです。そこでは院内外から依頼をうけてセミナーの資料作りなどの作業をしたり、外線取り次ぎなどをしたりしているそうです。

ここまでくるとディケア卒業も目前で、ディケアの利用をへらしながら作業所や就労支援施設、アルバイトをするなどさまざまにステップアップしていくそうです。

IMG_2908.jpg

夜の交流会に使われた小さなホテルのレストランは就労継続B型の施設として、委託を受けて運営しているそうですが、当事者が活き活きと働いている様子が印象的でした。

翌日は、ひだクリニックで力を入れている家族への心理教育プログラムに参加させていただきました。6回で1クールで毎週末に開催。8年前にひだクリニック開院した時から開催しているそうです。
評判をよび、連れ合って遠方からの参加者も多く、リピーターもたくさんいるようです。最初の2、3回はお試しで500円の実費ですが、その後は親自身のカルテをつくってショートケアとして参加しているそうです。講演終了後は知り合いになったグループで食事にいったり相談しあったり勝手に助けあって親自身もリカバリーしていきます。福祉就労の事業所がお弁当やお茶の販売もしていました。

今回は木村ナースの話でした。精神医療の歴史やおかしなところ、薬、病気についての基本的な知識、希望をもてる話、繰り返しの話、偉大なるマンネリズムのいつもの話です。近くの人とちょっと交流する機会をつくたり、水戸黄門の歌をオリジナルで歌ったあと、どんぐりコロコロでうたったり、オー牧場は緑で歌って、見方がかわるというのを体験したりという、お決まりのパターンを組み入れてあっという間の2時間でした。
最近は最後にゆずの「雨のち晴れるや」をテーマソングとしてみんなで歌っているようです。

ひだクリは地域住民や自治会とコラボしていて、メンバーも実行委員となって運動やお祭りに参加したりして、若い人が多く喜ばれているようです。さらに近所のガストや小僧ずし、カラオケ屋でもヘビーユーザーで地域に貢献しています。支援をうけつつの一人暮らしの方も沢山いて、不動産屋もアパートを喜んで紹介してくれるそう。

恋愛、結婚もすすめていて、結婚にいたったカップルも何組もいたり、子どもをもうけたり、マンションを買ったり・・。エリート当事者も。フットサルやバスケチームもあって、勝つことを目的に真剣に練習しているようです。そして海外旅行にも出かけたりしているそう。希望が持てる話です。


ディケアの疑似就労グループから発展した当事者中心の株式会社MARSで多角経営しており当事者に不動産の転借もしているそうです。その他にNPOもあって当事者ならではの多機能事業所も運営していて医療ではやりにくいニーズをカバーしているそうです。収入も増え年金もどんどんきられているメンバーも多く、これだけ後からどんどん利用者がくれば地域作業所で起こりがちな出来る障害者の抱え込みなんて問題はおこらないでしょうか。
そして、政策への働きかけとしてはピアサポータースペシャリストを診療報酬、施設基準いれたいと主張していました。


2日間の研修でたくさんヒントをいただきました。
学校や宗教的なコミュニティを彷彿させましたが「るえか」の名のもとにあつまる自助グループ的な側面も大きいのでしょうね。適応能力の高い統合失調症の慢性期方を広域からあつまっており、公共交通機関の乏しく知的障害をともなう群からアルコール依存症まで多様なニーズに応えなければならない地方の病院のディケアでそのままというわけにはいきませんが、ヒントをたくさんいただきました。
自分も外来や病棟業務で忙殺されていますが、もう少し仕事を整理してディケアや地域活動のテコ入れができる時間をつくりたいなとおもいました。 
Comment:1  Trackback:0
2014
03.08

せいしれんセミナー

Category: 未分類
3月7日に21回せいしれん保健福祉セミナーが松本の美ヶ原温泉ホテル翔峰で開催され、例年のごとく参加してきました。

せいしれんは当事者主体の実行委員会形式で開催されるセミナーで全県から統合失調症や躁うつ病などが主体の当事者と家族、支援者などが400人近く集まります。
そこにべてるっぽい(!?)雰囲気がうまれます。
工賃をためて泊まりがけでセミナーに来て宴会に参加するのを楽しみにしている当事者もいます。

seisirenn.jpg


そのときどきの企画で午前はシンポジウム、午後は分科会、その後に交流会(宴会)という流れです。
全県の作業所などがブースをだし物品販売なども行っていました。

今年のテーマは「薬とのつきあいかた」でした。
レクチャーやアンケート、ミニシンポジウムを交えての進行で、診察場面のコントなどもまじります。
医療関係者の参加は少ないですが、精神科の医師代表としてが村井病院の村杉薬剤師とともにお話させていただきました。
飲酒に関する質問に対し、村杉薬剤師は「お薬を飲んでいてお酒は絶対ダメ」と強調していました。

当事者の方から感想をいただきました。

「あなた薬詳しいですねぇ。」
そりゃ仕事ですから。

「医者と薬を上手く使えってことですね。」
そうそう、薬剤師もね。

そして、その後、大宴会で飲酒・・・(^_^;)。
今日の話は?

Comment:0  Trackback:0
back-to-top