2013
11.25

精神医療をどう育てどう使うか?

Category: 未分類
 社会の中で医療はどのような役割を果たしているのだろうか。できれば医療、特に精神医療とは関わりたくない。そして精神科の診断なんてまっぴらごめんだと考えている人もいるかもしれない。しかし医療は普段から人々の生活を見守っており、いざ困ったときには頼りになる存在でありたいと考えている。
 精神医療はリカバリー志向である。これは病や障害に振り回されていた生活や奪われた尊厳、人生を当事者自らの手に取り戻していくことを目指すということである。
 しかし精神障害とは他者と上手くつながれなくなる障害であり、家族も含めて社会から孤立し、支援を受けることそれ自体に支援が必要な状態に陥ることもある。支援者にはわずかな接点をたぐり粘り強く治療への合意へ至る過程を寄り添う丁寧な関わりが求められる。急性期に当事者と支援者が苦労した経験がその後の治療や支援で効いてくる。

 今日の精神医療は多職種、多職域からなるチームでアプローチをおこなうのが一般的である。このチームのメンバーにはさまざまな専門職種の他に当事者自身や家族、他の当事者(ピア)も含まれる。医師は有限な医療・福祉資源を医学的知識、科学的判断と医倫理にもとづいて適切に配分するという社会的責務を負いながら、支援チームを束ね、さまざまな制約の中で人生の再生のプロジェクトの設計図を当事者とともに描き実行していくいわば設計士の役割を果たしている。その医師の役割で大きいのが『診断』と『投薬』という行為である。しかしこの『診断』も周囲の理解や支援の乏しい状態では単なるスティグマ(烙印)になり、よけいに当事者を傷つけてしまうことになりかねない。また医師を追い詰め孤独にすると『薬』が増えるということも知っておくとよいだろう。回復の道標となる『診断』と、それぞれの当事者にあわせてカスタマイズされた自助具としての『薬』を使いこなして当事者がリカバリー(回復)を果たしていくためには、まず周囲の人、特に家族が元気でいて当事者の回復を信じられるようになることが必要である。そのためには専門職や他の家族当事者による家族に対する支援や家族会が大きな役割を果たす。さらに当事者や家族当事者が専門家と力をあわせて社会に向けて声を上げ、地域に必要な医療・福祉を創り育て、バラバラになった地域社会を紡ぐ活動を粘り強く続けることで、精神疾患に対する理解が広まり、さまざまな支援が増え、たとえ精神障害があっても居場所と出番のある豊かな社会に近づくことができるのだとおもう。
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